健康保険の扶養は、その年の合計ではなく「これから1年の収入の見込み」で判定します。人手不足による残業などで、一時的に130万円以上になることがあります。この場合、勤務先が「一時的な収入変動」だと証明すれば、原則として連続2回まで扶養のまま認定される仕組みがあります(出典: 厚生労働省「「年収の壁」への対応」)。

使えるかどうかを決めるのは、扶養する人が入っている健康保険(保険者)です。昇給や契約時間の増加で収入が増えた場合は、一時的な増加とは扱われません。まず増えた理由と、契約上の年収を確かめてください。

先に確かめる3つのこと

  1. 契約上の年収:雇用契約書や労働条件通知書の時給・月給と所定労働時間から、本来見込まれる年収を出します。
  2. 増えた理由:残業や臨時の繁忙手当なのか、基本給や契約時間が増えたのかを分けます。
  3. 保険者の確認時期:扶養する人の健康保険が、いつ・どの期間の収入を確認するかを聞きます。

この3つで、事業主の証明の対象になりそうか、そもそも扶養の見直しが必要かの見当がつきます。

一時的な増加として扱われる例と扱われない例

厚生労働省のQ&Aは、一時的な収入増加の主な要因として残業手当や臨時の繁忙手当を挙げています(出典: 厚生労働省「事業主の証明による被扶養者認定Q&A」)。

区分Q&Aに書かれている例
一時的な収入変動に当たる主な例同じ職場の人が休職・退職して業務量が増えた/受注が好調で職場全体の業務量が増えた/突発的な大口案件で業務量が増えた
一時的な増加と認められない例基本給が上がった/恒常的な手当ができた/契約の所定労働時間・日数が増えた
対象外になる人雇用契約書などから、年収の見込みが恒常的に130万円以上になることが明らかな人

「一時的」と認められる金額の上限は、示されていません。Q&Aは、上限を決めると新しい壁になりかねないことを理由に挙げ、保険者が雇用契約書なども見て確認するとしています。

事業主の証明を使う流れ

  1. 自分の勤務先に、厚生労働省の様式「一時的な収入変動に係る事業主の証明書」の記入を頼みます(出典: 厚生労働省「被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書(様式)」)。
  2. 勤務先は次の3つを書きます。雇用契約などで本来想定される年収、労働時間を延ばした期間、その期間の実際の収入額です。
  3. 証明書を、扶養する人の勤務先を通じて健康保険(保険者)に出します。雇用契約書などの添付を求められることがあります。
  4. 保険者が、ほかの書類と合わせて扶養を続けられるかを確認します。

「連続2回」の数え方

保険者が証明書を使って一時的な収入変動だと確認すると「1回」と数えます。収入の確認が年1回の保険者なら、連続する2年の確認で使えることになります(出典: 厚生労働省「事業主の証明による被扶養者認定Q&A」)。確認が年1回でない保険者では、どの期間の証明が要るかを加入先に相談するよう、Q&Aは案内しています。

掛け持ちしている場合

複数の勤務先で働いている場合は、130万円以上になった主な原因の勤務先から証明をもらいます。複数の勤務先でそれぞれ一時的に増えた場合は、それぞれから証明をもらいます(出典: 厚生労働省「事業主の証明による被扶養者認定Q&A」)。

掛け持ちで年収の見込みが恒常的に130万円以上になるのが明らかな場合もあります。その場合は扶養に当たらなくなると、Q&Aに書かれています。

2026年4月からの労働契約での判定

扶養認定日が2026年4月1日以降の人には、新しい取扱いが始まっています。給与収入だけなら、労働契約で決まった賃金から年収を見込みます(出典: 厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて(令和7年10月1日通知)」)。賃金には諸手当と賞与も含みます。

  • 労働契約の賃金から見込む年収が130万円未満で、ほかの収入が見込まれないこと
  • 同居なら扶養する人の年収の2分の1未満、別居なら仕送り額より少ないこと
  • 労働条件通知書などの契約内容がわかる書類と、「給与収入のみである」旨の申立てを出すこと
  • 契約の更新や条件の変更があったら、そのたびに書類を出すこと

想定外の臨時収入で、結果的に130万円以上になる場合もあります。通知は、社会通念上妥当な範囲なら扶養の扱いを変える必要はないとしています。協会けんぽは、この方法で認定できない例も案内しています。労働時間がはっきりしない契約や、契約期間が1年に満たない場合です(出典: 協会けんぽ「被扶養者の認定における特例について」)。

判断に必要な情報

  • 雇用契約書・労働条件通知書(時給、所定労働時間、契約期間)
  • 直近の給与明細と、残業が増えた月の明細
  • 残業が増えた理由(勤務先に聞く)
  • 扶養する人の健康保険の名前と、収入確認の時期
  • ほかの勤務先や給与以外の収入の有無

この記事だけでは決まらないこと

状況決めるところ
増えた収入が「一時的」に当たるか扶養する人の健康保険(保険者)
確認の対象になる期間扶養する人の健康保険
勤務先が証明書を書いてくれるか自分の勤務先
収入以外の要件(同居・仕送りなど)を満たすか扶養する人の健康保険

税の扶養は別に確かめる

ここまでの話は健康保険の扶養だけです。配偶者控除などの税の基準は、1月〜12月の合計で見ます。2026年分は、配偶者の給与収入が136万円以下なら配偶者控除、207万円以下まで配偶者特別控除の対象です(出典: 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし(基礎控除の引上げ等)」)。事業主の証明は税には関係しません。全体の表は2026年分の年収の壁早見にあります。

次にすること

  1. 残業が増えた月がわかった時点で、自分の勤務先に増えた理由と、事業主の証明を書いてもらえるかを聞きます。
  2. 扶養する人を通じて、健康保険に収入確認の時期と必要な書類を聞きます。
  3. 扶養から外れることになった場合は、扶養する人の勤務先を通じて「被扶養者(異動)届」を出します。削除の届はその都度出します(出典: 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」)。自分の勤務先で社会保険に入るか、国民年金・国民健康保険に入るかも確かめます。

聞く先と聞く内容の例

  • 自分の勤務先の人事:「人手不足で残業が増えています。被扶養者の収入確認のための事業主の証明書を書いてもらえますか」
  • 扶養する人の健康保険:「収入の確認はいつ、どの期間の分をしますか。事業主の証明書のほかに要る書類はありますか」
  • 年収の壁突破 総合相談窓口(厚生労働省):「事業主の証明の仕組みについて一般的なことを知りたい」。フリーダイヤル 0120-030-045(平日8時30分〜18時15分。土日祝と12月29日〜1月3日を除く)。(出典: 厚生労働省「「年収の壁」への対応」)

取扱いは2026年11月1日に厚生労働省・日本年金機構・協会けんぽの公式資料で確認しました。当サイトは個別のご相談には応じていません。